退
[音]タイ(呉)(漢) [訓]しりぞく しりぞける すさる しさる のく ひく


1 後ろに下がる。しりぞく。しりぞける。 

後退
1 後ろへさがること。「車を後退させる」 
  ⇔「前進」 前へ進むこと。
2 勢いが衰えたり程度が低くなったりすること。「景気が後退する」「病気が後退する
  「後退角」 航空機の主翼を、胴体に対して直角より後方へ傾けて取り付けた場合の、翼の角度。
  「後退翼」 後退角を与えられた翼。音速に近い速さで飛ぶとき、抗力をなるべく小さくするためのもの。
  「後退色」 寒色系の色や明度の低い色で、その他の色と対比させると遠くにあるように見える色。濃い緑、濃い茶など。
    ⇔「進出色」 暖色系の色や明度の高い色で、その他の色と対比させると近くにあるように見える色。赤・橙・黄など。
  「後退的論証」 論理学で、从结论寻找前提的论证方法
    ⇔「前進的論証」 論理学で、从前提出发得到结论的论证方法。
  「無限後退」 ある事柄を成立させている原因や条件を求めて、その原因の原因、又、その条件の条件という様に限りなく遡っていく事。

退路」 退却する道すじ。
進路」 進んで行く道。行く手。「敵の進路を阻む」「台風の進路

膝退」 しったい 跪いたまま退くこと。

却退卻退」 
  後退すること。退歩すること。
退却」 
  戦いに敗れて後へ下がる事。また、物事の成り行きが不利になって引下る事。後退。
  「形勢不利とみて退却する

撤退」 軍隊などが、陣地や拠点を引き払って退くこと。「海外市場から撤退する
撃退」 攻めてきた敵などを、逆に攻撃して追い払うこと。「敵の大軍を撃退する
敗退」 戦い・試合に負けてしりぞくこと。「第一次予選で敗退する
退城」 城を退出すること。下城。
退陣」 陣を構えていた位置から軍隊を後方にしりぞかせること。
退軍」 軍勢をまとめ、その陣地から退くこと。退陣。

退行
1 後方にさがること。
2 銀行員が仕事を終えて銀行を出ること。また、銀行員が退職すること。
3 生物の発達や進化がある段階で止まり、むしろ元に戻るような変化を起こすこと。
4 心理学で、困難な状況に遭遇したとき、精神発達上より未熟で幼稚な段階の行動を示すこと。
5 天体の、逆行のこと。
退行的進化
  系統発生の過程における退化が適応的な意義をもつ場合を、進化の一環とみなしていう語。
退行テスト」 = 「回帰テスト」 = 「リグレッション‐テスト」 regression test
  ComputerのProgram開発において、Programの一部を変更した際に、新たな問題が発生していないかを検証すること。

退散
  立ち去ってちらばること。また、その場からのがれ去ること。
  「悪霊が退散する」「雲行きが怪しいからそろそろ退散しよう
怨敵退散」 おんてきたいさん
  怨敵を退散させること。降伏の祈願などで唱える。
退治対治
1 悪いものや害を及ぼすものをうち滅ぼすこと。「ネズミを退治する」「鬼退治
2 仏語。煩悩(ぼんのう)や怠惰な心を断つこと。
退治る
1 退治する。討ち滅ぼす。
2 料理をたいらげる。

海退」 海面の低下、あるいは陸地の隆起によって、海岸線が海側に後退し、陸地が広がること。
海進」 海面の上昇、あるいは陸地の沈降によって海が陸に入り込んでくること。
退水」 あふれ出た水がひくこと。
退潮」 1 潮が引く事。引潮。2 盛んだった勢いが衰える事。「景気の退潮
退帆」 船が帆をかけて帰って行くこと。

退歩」 あともどりすること。能力や技術などが以前より低くなること。後退。「記憶力が退歩する
進歩」 物事がしだいによりよいほうや望ましいほうへ進んでいくこと。「進歩が早い


2 身を置いていた場所や地位から去る。

退去」 今いる場所から立ち去ること。立ちのくこと。「国外に退去する」「退去命令
退出」 今までいた場所から退いて出ること。特に、公けの場所や貴人の前などから出ること。「法廷から退出する
退避」 その場所を退いて危険を避けること。避難。「津波の前に高台まで退避する
避退」 危険をさけて、その場を離れること。退避。
早退」 会社や学校を定刻より早く退出すること。はやびけ。「病気で早退する
退室」 その部屋から出て行くこと。「答案を書き終えた者から退室する」 ⇔「入室
退席」 その席から立ち去ること。その場をさがること。「会議の途中で退席する
退団」 ある団体からぬけること。「球団を今季限りで退団する」 ⇔「入団」
退庁」 官吏が仕事を終えて役所から出ること。「定時に退庁する」 ⇔「登庁」
退座
1 その集まりなどの席から去ること。退席。「会議の途中で退座する
2 =「退団」 役者などがその属する一座をやめること。
退場
1 会場・競技場などから出て行くこと。「選手団が退場する」「退場処分」⇔「入場」
2 俳優などが、舞台から引き下がること。「下手に退場する」⇔「登場」  下手・しもて
退廷
1 法廷から外へ出ること。「証人が退廷する」⇔「入廷
2 =「退朝」 朝廷から退出すること。

退職」 勤めている職をやめること。現職をしりぞくこと。「定年で退職する
  →「退職金」「退職年金」「適格退職年金
退位」 国王や皇帝などがその位をしりぞくこと。
退任」 任務をやめること。役目をしりぞくこと。「任期途中で退任する
退陣」 今まで就いていた重要な地位から身をひくこと。辞職。「首相が退陣する
退官」 官職をやめること。官吏が職を退くこと。「六〇歳で退官する
退身」 ある事柄から身を引くこと。特に、官職を退くこと。致仕。
退耕」 官職を退いて、農耕に従事すること。転じて、官職を退いて民間に下ること。
退居」 俗世間から遠ざかって静かに生活すること。隠居。
退京」 都を立ちのくこと。現在では、ふつう東京を去ること。
退老」 年をとって職務から退き、隠居すること。
退隠」 職を退き、暇な身分となること。
隠退」 社会的活動の第一線から退くこと。世間を避けて閑居すること。退隠。「田舎に隠退する
  →「隠退蔵」 不正に入手したものを、人に知られぬように隠し持っていること。「隠退蔵物資
勇退」 後進に道を譲るため、自分から官職などを退くこと。「若返りを図って幹部が勇退する
  →「勇退高踏」 官職を勇退し、俗世間から離れて生活すること。また、そのような生活態度。
引退
  役職や地位から身を退くこと。スポーツなどで現役から退くこと。
  「スター選手が引退する」「引退興行
辞退
  勧められたことを遠慮して断ること。また、自分の既得の地位・権利などを遠慮して放棄すること。
  「出場を辞退する
退役」 
1 たいえき 将校・准士官で後備役が満期になり、また傷病などのため兵役を退くこと。「退役将校
2 たいやく 役職からしりぞくこと。〈和英語林集成〉


脱退」 属している団体・組織から抜けること。「組合を脱退する
退会」 会から退き、会員でなくなること。「学会から退会する
退寮」 寮生活をやめて、寮から出ること。「結婚して退寮する」 ⇔「入寮
退院
1 入院していた患者が、病状が回復して病院から出ること。「先月退院したばかりです」⇔「入院
2 代議士が議院から退出すること。 ⇔「登院
3 住職がその地位を退いて隠居すること。
4 江戸時代、僧に科した刑罰。その職を解いて寺から退去させること。
退校
1 学生・生徒が在学中に中途で学校をやめること。また、やめさせる事。退学。「退校処分
2 =「下校」 学校を出て帰途につくこと。「台風が来るので早く下校させる
  ⇔「登校」 授業を受けるために、または勤務するために学校へ行くこと。「小学生が集団で登校する
退学
1 学生・生徒が在学中に、特別の理由で、自発的に学校をやめること。又、学校側から強制的にやめさせられること。退校。
  「中途退学」「退学処分
2 規定の課程を修得して、学校をやめること。
中退」 修業年限の中途で退学すること。「大学を中退する
退勤」 
  勤務が終わって、勤め先から退出すること。「六時に退勤する
  ⇔「出勤」  勤めにでること。勤務先へでかけること。「毎朝九時に出勤する」「休日出勤
退社
1 勤務している会社を辞めること。「一身上の都合で退社する」「定年退社
  ⇔「入社」  会社にはいり、その社員となること。「縁故で入社する
  →「寿退社」 ことぶき・たいしゃ 女性社員が結婚を理由に退職すること。
2 その日の勤めを終えて会社から退出すること。「五時半に退社する
  ⇔「出社」  会社に出勤すること。「午前九時に出社する」「出社時間



3 勢いが弱まり衰える。势头减弱


減退

  減って少なくなること。特に、体力・意欲などが衰えること。

  「食欲が減退する
衰退衰頽」 すいたい
  勢いや活力が衰え弱まること。衰微。凋落(ちょうらく)。
  「産業が衰退する
退勢頽勢」 たいせい
  勢いが衰えること。衰退の形勢にあること。衰勢。
  「社の退勢を挽回する
退譲」 自分を卑下して人に譲ること。謙退。謙譲。
謙退」 へりくだって控え目にすること。また、そのさま。
謙譲」 へりくだりゆずること。自分を低めることにより相手を高めること。また、控えめであるさま。謙遜。
退化」 ⇔ 「進化
1 進歩が止まって以前の状態に逆戻りすること。また、衰えたり規模が小さくなったりすること。「記憶力が退化する
2 生物の個体発生または系統発生の過程において、器官・組織などが縮小・衰退、あるいは消失すること。人間の虫垂・尾骨などはその例。


退屈


1 することがなくて、時間をもてあますこと。また、そのさま。



  →「退屈凌ぎ」 退屈をまぎらすこと。また、その手段。暇潰し。「退屈凌ぎにビデオを見る


  「散歩をして退屈をまぎらす」「読む本がなくて退屈する


2 飽き飽きして嫌けがさすこと。また、そのさま。


  「退屈な話」「退屈な人


3 疲れて嫌になること。


4 困難にぶつかってしりごみすること。


5 仏語。修行の苦難に負け、精進の気をなくすこと。



4 (「頽」の代用字)くずれる。
退廃頽廃」 たいはい
1 衰えてすたれること。くずれ荒れること。廃頽。「旧家が退廃する
2 道徳的な気風がすたれて健全な精神を失うこと。「退廃した社会
廃退廃頽
1 行われなくなったり、使われなくなったりしてすたれること。
2 道義・気風などが、すたれて衰えること。
退廃的
  道徳的にくずれて不健全なさま。デカダン。「退廃的な時代の風潮
退廃派」 = 「デカダンス」
1 19世紀末、フランスを中心とした文芸上の一傾向。虚無的、退廃的、病的な唯美性を特色とする。
2 虚無的、退廃的な風潮や生活態度。


5 (「褪」の代用字)色があせる。「退色」
退色褪色」 たいしょく
  日光などにさらされて、色がだんだん薄くなること。色があせること。また、その色。「退色したカーテン」
退紅色」  たいこうしょく
  やや薄い紅色。淡紅色。
退黄色褪黄色」 たいこうしょく
  薄い黄色。クリーム色。
退紅褪紅」 あらぞめ
1 紅花で染めた薄紅色。あらいぞめ。  紅花・べにばな
2 薄紅に染めた短い布狩衣。仕丁が着用した。 布狩衣・ぬのかりぎぬ 仕丁・じちょう






退守」 しりぞいて守ること。生活態度などが、きわめて消極的なこと。

縮退
1 恐れて退くこと。
2 量子力学で、一つの系に、同じエネルギーに対応する状態が二つ以上存在すること。その系に、ある種の対称性があることを意味する。縮重。
退縮
1 おそれて小さくなること。ひるむこと。畏縮(いしゅく)。
2 成育した組織や器官などが、縮小すること。
退嬰」 
  しりごみして、ひきこもること。進んで新しいことに取り組もうとする意欲に欠けること。
  「退嬰の風がはびこる」「退嬰主義
退嬰的
  進んで新しいことに取り組もうとしないさま。
  「退嬰的な時代精神

進退」 しんたい・しだい
  自由にすること。思いどおりにすること。
一進一退
  進んだり退いたりすること。また、事態がよくなったり悪くなったりする状態。
  「戦況は一進一退を繰り返す」「病状が一進一退する
座作進退」 ざさ・しんたい
  日常の身のこなし。立ち居振る舞い。行儀。
出処進退」 しゅっしょ・しんたい
  出て官途にあることと、しりぞいて民間にあること。役職にとどまることと役職を辞すること。身の振り方。
  「出処進退を明らかにする
進退伺い」 しんたい・うかがい
  職務上過失があった時、本人が責任を負って身の去就について上司の処置を仰ぐこと。また、そのために差し出す文書。
寸進尺退」すんしんしゃくたい・「尺進尋退」せきしんじんたい
  1寸進んで1尺退くこと。得るところが少なく、失うところが多いこと。
  1尺進んで、1尋(ひろ)退くこと。得るところが少なく、失うものの多いことのたとえ。
進退両難
  進むことも退くこともできない困難な状態。
進退維谷まる
  《「詩経」大雅・桑柔から》前に進むことも後ろへ退くこともできなくなる。どうすることもできない状態に陥る。苦境に立つ。
寸退
  少しだけ退くこと。少しずつ退くこと。
寸進
  少しだけ進むこと。少しずつ進むこと。「寸進寸退

退蔵
  物資・金銭などを使用せずにしまいこんでおくこと。
  「貴重な文献が退蔵されている」「能力を退蔵する
退蔵貨幣」 = 「蓄蔵貨幣
  流通から引き上げられて蓄蔵されている貨幣。

凡退
  野球で、打者が安打または犠打を打つことができずに退くこと。
  「好機に凡退する」「三者凡退


退転
1 仏語。修行を怠り、一度得た悟りを失って低いほうに落ちること。
2 落ちぶれて他の地へ移ること。
不退
1 仏道修行の過程で、すでに得た境地から後戻りしないこと。不退転。
2 退くことなくいつも修行すること。善根を重ねて、退いたり失ったりしないこと。不退転。
不退地
1 不退の地位。菩薩の初地の位。不退転位。
2 西方極楽浄土のこと。
不退寺
  奈良市法蓮町にある真言律宗の寺。山号は、金竜山。正しくは不退転法輪寺。
  平城天皇の萱(かや)の御所を、承和14年(847)孫の在原業平が寺にしたという。在原寺。業平寺。
不退転
1 信念を持ち、何事にも屈しないこと。「不退転の決意
2 =「不退」
不退の地」 ふたいのち = 「不退の土」 ふたいのど
  《ここに生まれた者は再び冥界に戻ることがないという所から》極楽浄土。不退の地。
退没」 たいもつ
  仏語。上地から下地へ、楽の世界から苦の世界へ落ちること。
退凡下乗」 たいぼんげじょう
  仏語。摩訶陀国王の頻婆娑羅によって釈迦説法の地、霊鷲山に建てられた2本の卒塔婆に示された語。1本には下乗と記し、王は乗り物からおりて歩き、もう1本には退凡と記し、凡人の立ち入りを禁じたという。この四字を制札に書いて寺院の門前に立てる。

仮退院」 かりたいいん
仮釈放の一。少年院または婦人補導院の在院者を、行政官庁(地方更生保護委員会)の処分によって仮に退院させること。対象者は保護観察に付される。

退蔵院」 たいぞういん
京都市右京区にある妙心寺の塔頭の一。所蔵の如拙筆「瓢鮎図」は国宝。枯山水の庭園は狩野元信作と伝える。 塔頭・たっちゅう

板垣退助」 いたがき・たいすけ
[1837~1919]政治家。土佐の人。愛国公党を結成し民選議院設立の建白書を提出、また土佐に立志社をつくり自由民権運動を指導した。明治14年(1881)自由党を結成。同31年、大隈重信と日本最初の政党内閣を組織、内相となった。

潁原退蔵」 えばら・たいぞう
[1894~1948]国文学者。長崎の生まれ。京大教授。江戸文学、特に俳諧を研究。著「俳諧史の研究」「江戸時代語の研究」など。

韓退之」「韓愈」 かんたいし
[768~824]中国、唐の文学者・思想家。唐宋八大家の一人。昌黎(しょうれい)(河北省)の人ともいわれるが、河陽(河南省)の人。字は退之。昌黎先生と称される。儒教、特に孟子を尊び、道教・仏教を排撃した。柳宗元とともに古文復興運動に努めた。