2008-09-02

▼〈谷川に小さな学校がありました……さわやかな九月一日の朝でした〉と、宮沢賢治書き出す。夏休みが終わって子どもたちが登校してくる。そして教室の机に、赤い髪の転校生ぽつんと座っているのを見つける。山の子らは、突然やってきた都会風の転校生に驚いて泣き出してしまう――ご存じ『風の又三郎』の冒頭である。名作を思い出しながら、きのうの夏休み明け、突然いなくなる先生に泣く子はいなかったかと心配した。こちらは大分県の学校の話だ
谷川    たにがわ
岸     きし
爽やか  さわやか
宮沢賢治 みやざわ・けんじ
書き出す かきだす
登校    とうこう
転校生   てんこうせい
ぽつん   =ぽつり    それだけ孤立しているさま。 孤零零地
やってくる こちらに向かってくる。
都会風   とかいふう
泣き出す  なきだす
ご存知   如你所知的
冒頭    ぼうとう
明け    あけ   ある時期・季節が終わること。


▼この春から教壇に立っている21人が、不正に合格したとして採用を取り消される。うち1人はすでに、夏休み中に辞職した。ショックを受けた子もいるだろう。さわやかさとは程遠い2学期の始まりである
教壇    きょうだん
不正    ふせい
うち一人  其中一人
辞職    じしょく
程遠い   ほどとおい 距離・時間などの隔たりが大きい。

这就是远远说不上“爽朗”的第二学期的开始。

▼去った担任に、ある児童が「またこの学校に帰ってくるもんね」と手紙を書いたと聞いて、胸が痛む。自主退職は明日が期限だが、だれも自分では口利きを知らなかったという。周囲と教委の罪は小さくはない
担任    たんにん  班主任
痛む    いたむ
口利き   くちきき   間に立って紹介や世話をすること。また、その人。

听说有孩子给离开的班主任写信问“还会回学校吗?”的时候,心都痛了。
谁都说自己不知道中间人介绍(进行贿赂)的事。


▼9月1日の教室には、夏と秋がゆきあうような、不思議な空気がある。子ども心にも夏の終わりは寂しい。そんな感傷を先生の姿と声が断ち切って、新しい学期への意欲がさざめき出す。子どもの季節を回すのに、先生はなくてはならない存在だろう
行き逢う  ゆきあう
感傷    かんしょう
断ち切る  たちきる
さざめく   大勢の人が、にぎやかに音や声を立てて騒ぐ。

9月1日的教室里,弥漫着如同夏秋之交一般不可思议的气氛。在孩子们的心里正因夏天的结束而寂寞,而老师的身姿和声音就切断了那样的感伤,在喧闹中引发孩子们对新学期的向往。孩子们的季节轮回,老师是必不可少的存在吧。

▼『風の又三郎』の先生も、〈むかしから秋は一番からだもこころもひきしまって、勉強のできる時〉だと話して、季節を回した。不正のウミを出し切りつつ、子どもたちへの影響を最小限にとどめる。県教委に課せられた前代未聞の宿題である。
膿      うみ
課す     かす
前代未聞  ぜんだいみもん