2008-10-24

▼まとめて産婦人科というが、産科と婦人科の空気はかなり違うらしい。祝福と闘病、病院によっては二つが同居する。禅僧から医師になった対本宗訓さんが、臨床実習での体感を近著に記している。「まさに生老病死が混在して、双方とまどいもあるのではないかと傍目に思うことがある」(『僧医として生きる』春秋社)
産婦人科 さんふじんか
産科    さんか
婦人科  ふじんか
祝福    しゅくふく
闘病    とうびょう
同居    どうきょ
禅僧    ぜんそう
対本宗訓 つしもと・そうくん
臨床実習 りんしょう・じっしゅう
体感    たいかん
近著    きんちょ
生老病死 しょうろうびょうし
混在    こんざい
双方    そうほう
傍目    はため


▼同じ苦しみでも、お産は「生」の営みだ。ところが産科医不足のために、痛くもうれしいその瞬間が昔とは別の意味で「命がけ」になりつつある。大東京の真ん中でも、と嘆息する
苦しみ  くるしみ
営み   いとなみ
産科医 さんか・い
不足   ふそく
瞬間   しゅんかん
嘆息   たんそく


▼脳内出血の妊婦(36)が八つの病院に受け入れを拒まれ、亡くなった。最初に断った都立病院は、妊婦に緊急対応できる施設に指定されている。なのに産科医は定員に満たず、週末の当直は1人態勢だった
脳内出血    のうない・しゅっけつ
妊婦     にんぷ
八つ     やっつ
拒む     こばむ
断る     ことわる
緊急対応  きんきゅう・たいおう
満つ     みつ
当直     とうちょく
態勢     たいせい


▼満床などを理由に拒否した他院も有名どころだ。首都の夜、女性を守るべき駆け込み寺が、豪壮な門を閉ざして並ぶ図が浮かぶ。寺の担い手が足りなくては話にならない。医学生が産科を敬遠するのは、きつい勤務と訴訟リスクゆえと聞く。ストレスの中では祝福も色あせよう
満床   まんしょう
拒否   きょひ
豪壮   ごうそう
担う   になう
敬遠   けいえん
訴訟   そしょう


▼僧医の対本さんは「僧侶は広く『いのち』を説き、医師は個々の『命』を扱う。どの生命も大きないのち、つまり縦横無尽のネットワークの中で生かされているのです」と語る。「いのち」が表す支え合いの輪が、いま危ない
僧医     そうい
僧侶     そうりょ
縦横無尽  じゅうおうむじん
支え合い  ささえあい


▼無事だという赤ちゃんは後年、生を賭した母に何を思うのか。小さな命を送り出し、一つの命が消えた。どちらの命も、救急医療体制の存在理由、いのちを問うている。
後年     こうねん
救急医療体制   きゅうきゅう・いりょう・たいせい