2008-10-02 ビデオ店の火事

▼〈路上で寝るときは段ボールから顔を出しておくべし〉。本紙生活面に、男性ホームレスの「助言」が載った。その箱の中に生身の人間がいると知らせないと、通行人蹴られるのだという。いつの世も野宿はつらい

路上  ろじょう
段ボール  瓦楞纸板
べし     (終止形で)勧誘・命令の意を表す。…してはどうか。…せよ。
生身     なまみ   父母より生まれた身体。生まれながらの身体。
通行人   つうこうにん
蹴る     ける
野宿     のじゅく


夜更けから明け方の大都市は、ささやか屋根寝床を求める人であふれる。終電を逃した勤め人、歓楽街たむろする少年少女、帰るべき場所のない日雇い労働者もいよう。きのう煙に包まれたのも、そんな「宿」の一つだった
夜更け   よふけ     夜がふけたこと。また、その時分。深夜。
明け方   あけがた   夜の明けようとするころ。夜明け方。黎明。払暁。
笹屋か   ささやか    形や規模があまり大げさでなく、控えめなさま。
屋根    やね
寝床    ねどこ     寝るための床。寝るために敷かれた敷物・布団など。
溢れる   あふれる
歓楽街   かんらくがい
屯する   たむろする  一つ所に大ぜいの人が集まる。
日雇い   ひやとい
宿      やど


▼大阪の個室ビデオ店の火事で、男性客15人が亡くなり、放火や殺人の疑いで客の男が捕まった。1畳余りの個室が32。8割ほどが埋まっていたという。共用のシャワーがあり、1500円で一夜を明かせるとなれば、ホテル代わりの利用も多くなる
個室   こしつ
放火   ほうか
共用   きょうよう



漂泊俳人種田山頭火は〈泊るところがないどかりと暮れた〉と詠じた。こうした境地に、誰もがたどり着くわけではない。かくして雨露しのぐ+α」のサービスが繁盛する。より安く、より気持ちよく朝を迎えたいという需要が、眠らないネットカフェやマンガ喫茶を新手の宿に変えてきた
漂泊    ひょうはく
俳人    はいじん
種田山頭火  たねだ・さんとうか
詠じる     えいじる
境地      きょうち
辿り着く    たどりつく  尋ね求めながら、やっと目的地に行き着く。
斯して     かくして
雨露      あめつゆ
凌ぐ      しのぐ
繁盛      はんじょう
需要      じゅよう
ネットカフェ  网吧
新手      あらて


惨事のたびに防火や避難の規制は厳しくなるが、都市は生き物。色んな「屋根と寝床」が料金や快適さを競い、新しい夜を提案し続ける。「悪意」まで封じる防火策を店に求めるのはだろうか
惨事    さんじ
規制    きせい
生き物   いきもの
競い    きそい
悪意    あくい
封じる   ふうじる
酷     こく


▼「段ボールから顔を出す」ような用心要るのでは、お金を払う意味がない。とはいえ、利用者もせめて、逃げ道を確かめるなどの自衛策講じたい。すでに「どかりと暮れる」季節である。
用心    ようじん
要る    いる
責める   せめる
自衛策   じえいさく
講じる   こうじる